2024年12月

榛名湖畔の仲よしカラス



2024.12.2. 榛名湖畔



 2024年12月の初旬。榛名山の自然を撮影する人たちと一緒に初冬の榛名湖畔にいたときのこと。数羽のカラスの群れが近くにいた。湖面には冬鳥のキンクロハジロやホシハジロ、オオバンなどといった水鳥があちこちに浮かんでいたが、沼の原の草原やカルデラ内の林には鳥の姿はほとんど見かけなくなっていたから、このカラスの一群はちょっと気になる顔ぶれだった。
 カラスたちは湖の水辺に突き出した木の枝や頭上の大きな樹木の枝にとまって羽繕いをしたり、水辺を歩いていたりしている。榛名山周辺にはハシブトガラスとハシボソガラスの2種がいるが、そこにいたのはハシボソガラスだった。
 一般的にハシブトガラスは街中あるいは森林に、ハシボソガラスは農耕地などに多いとされるが、農耕地にもハシブトガラスがいるし、林の中にもハシボソガラスを見かけることがあるから、それほど完璧なすみわけがされているわけでもないようだ。
 湖畔にいたハシボソガラスの一行は大騒ぎをするわけでもなく、むしろカラスにしてはずいぶんともの静かな様子だった。榛名山麓の畑でよく見かけるカラスたちは、大勢で群れて、ときには大声で鳴きかわし、ときには大群で飛び交うようなイメージがあるが、そんな様子はまったく感じられないのである。
 少し近づいてみた。しかし、カラスたちは特に逃げるようなそぶりも見せず、まるで我々の存在を無視するかのように、それまでの自分たちの行動を続けているのである。山麓のカラスたちはかなり遠方からでも、彼らを注目する人を見つけると飛び立ったりしてしまうことが多いのに、どうしたことだろうか。このカラスたちの警戒半径は非常に短いようだ。山麓の畑のカラスたちが人を拒絶したような振る舞いをするのに対して、このカラスたちは妙に人に馴れた都会的な(?) 雰囲気を漂わせているのだった。
 その群れの中に2羽のとても仲良しのカラスがいた。枝でぴったりと身を寄せ合って、同じ方向を向いてじっとしている。そうかと思えば、小さなゆっくりとした動きで隣のカラスの顔のあたりを羽繕いするようなしぐさをしたりもしている。2羽で連れ添って湖畔をゆっくりと散歩でもするように歩く姿も見られた。周りの仲間たちと同じ群れでありながら、2羽だけの世界を作っているような雰囲気いっぱいなのだ。周囲のカラスたちも物静かだが、この2羽はとりわけ静かに静かに2羽だけの時間を過ごしているようだった。
 カラスたちは我々が彼らの存在に気がついてから立ち去るまで、ずっとそこにいた。一行はその場所で榛名湖の様子をタイムラプスで撮影するようなこともしていたから、1時間以上はそこに滞在していたはずだ。寒い風の吹く冬の榛名湖畔だったけれど、なんとなく優雅なカラスたちとのひとときは、時間が過ぎてゆくのが少し惜しいような気さえしていた。

 その後、何度かその場所を訪れることがあった。もしかして、あのカラスたちがいないだろうか、と思ってわざわざ立ち寄ってみたこともあった。あのカラスたちの振る舞いは、そこが彼らの住み慣れた場所であるかのようだったから、またそこへ行けば出会えると思っていたのだ。
 だが、彼らと出会うことはなかった。冬の榛名湖畔は冷たい風が吹くばかりで、水鳥以外の鳥たちの姿を見つけることさえ難しかった。
 もう一度、彼らに会いたいな…。いったいどこへ行ってしまったのだろう。

 





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