2023年4月
かえる池のヤゴ


かえる池にいたヤゴ      2023.4.21.


 かえる池にアカガエルの卵が見つかってからというもの、もう孵化しているのではないかと、水中の卵塊を確認するのが日課のようになっていた。
 そんなある日、いつものように水面をのぞくと、池の中に落ちている枯葉に隠れるようにして1匹のヤゴがいるのが目にとまった。頭部は落葉の下で、尾部のみが見えている。頭隠してなんとやら、の状態である。
 アカネトンボのヤゴよりもずっと大きく、全体的には細長い恰好をしている。この体形と大きさからするとヤンマの仲間だろうか。
 しかし、ヤンマの仲間にしても、別のトンボにしても、まだ4月。このあたりでトンボの姿は見ていない。成虫越冬するオツネントンボなどを除いて、ここでその年最初に見かけるトンボといえば、たいていサナエトンボの仲間なのだが、それは5月か6月のことだ。まだ今年の成虫が産卵し、それがここまで成長するとはとても考えられない。ここにこの大きさのヤゴがいるということは、昨年のうちに産卵したトンボの卵が孵り、幼虫の姿でここで越冬したことを意味しているはず。
 
 かえる池が水をためて冬を越したのは初めてのことだった。昨年秋が深まると晴天が続き、池の水は少しずつではあるが減っていった。水が地下へ漏るということもあるのかもしれないが、水蒸気となって空気中へも水分が消えていったようだ。そして、冬になって、少なくなった水は凍りついた。そして、その上に雪が降り積もった。雪が積もる前には凍りついた水が日中溶けるような日もあったが、雪が上を覆ってしまうと、もう液体の水を見ることはなくなった。
 そしてマイナス10℃を下回るような日がやってくるようになると、家の前にある小さな畑の土は地下まですっかり凍りつき、その様子から、池も底まで凍りついてしまったように思われた。
 それなのに…。このヤゴはその過酷な環境をどうやって生き延びたのだろう。上に積もった雪が断熱材の効果を発揮して底までは凍りつかなかったのか。それとも、凍りつかないようなもっと深くまで土の中へ潜っていたのか。あるいは、凍りついても仮死状態のようになって生き抜く不死身の力を持っているのか…?
 …謎である。






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