2022年3月
昼間のフクロウ


2011年1月8日に現れたフクロウ



  雑木林で倒木を薪にする仕事をしていると、どこからかフクロウの鳴き声が聞こえてきた。
 ホゥホゥ…、  ゴロスケホッホー
 最初のホゥホゥ≠フ後、十分な時間を溜めてからゴロスケホッホー≠ニ続く。その間合いからして、カケスの物まねなどではなく、間違いなくフクロウの声である。物まね上手なカケスでもここまで完璧にフクロウを真似することはできないだろう。
 夕方や暗くなってからの時間帯のフクロウの声はもうすっかりお馴染みとなったが、まだ太陽が高い位置にあるときには、滅多に聞く機会はない。
 チェンソーを止めているときに、ときどき聞こえてくるから、かなりの頻度で鳴いているようだ。
 別の日にも、昼間から聞こえてきた。
 また別の日にも。
 また別の日には、午前中に降る名残り雪の中でも聞こえてきた。
 今まで、これほど毎日のように昼間からフクロウの声を聴くことなどなかった。どこから聞こえてくるのだろう。
 フクロウのオスの声は2kmは届くというが、多分それは静かな夜のことで、雑音のあふれる昼間ではそう遠くからは聞こえてこないのではないか。案外近い所で、チェンソーの騒音にめげることなく、あるいは、負けじと、鳴いているのかもしれない。
 しかし、こんなに昼間に鳴くのはどうしてなのだろうか。
 ヒトの中にも、生活の時間帯が夜という人はたくさんいる。夜勤の人はもちろんだが、新型コロナウィルス対策で巣ごもりしているうちに、昼夜逆転してしまったという人も多いと聞く。あるいは、引きこもってしまった人の多くは夜行性となっていることが多いらしい。もしかして、フクロウの中にもそんな昼夜逆転がいる…?
 ところが、連れ合いが妙なことを言い出した。
 フクロウは重大な何かが起こるのを知らせている、というのだ。2011年のあの大地震と原発事故の前には、毎日のようにフクロウが姿を現していた、というのである。
 ギリシャ神話では女神アテナの、ローマ神話では女神ミネルヴァの化身とされるフクロウは知性の象徴とされているし、アイヌの世界ではシマフクロウはカムイ(神)である。一方で、日本ではフクロウは死を表す不吉なものという伝承があるのだとか。何やらフクロウは、良くても悪くても、神がかった存在と見なされる傾向がある。
 何かと物語を作りたがる連れ合いにとってのフクロウは、神からのお告げを伝えに来た使者のような存在らしい。
 さて、昼間のフクロウが意味するのはどんなことなのだろう。
 南海トラフ? 関東直下型? 糸魚川静岡構造線? あるいは地面の話ではなく、狂った独裁者の戦争のこと…? 悪いことはいくつでも思い浮かぶ。
 だが、少し冷静になって考えると、フクロウにとって3月は繁殖期の真っ最中なのだ。熱心なこの個体は昼間も寝る間を惜しんで、鳴き続けているだけなのかもれしない。
 悪いことが起こらないことを願いたい。
 
 





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