2020年6月
ヘビイチゴ



一面のヘビイチゴ  2020.6.4  榛名山西麓


 里山の道脇に赤い小さな実が目につきだした。ヘビイチゴである。しばらく前は、黄色い花が緑の葉の上に咲いていたのだが、それが姿を変え、赤い実となってあらわれたのだ。
 ヘビイチゴと書いてしまったが、もしかしたらそれはヤブヘビイチゴかもしれない。ヘビイチゴとヤブヘビイチゴはよく似ていて、同じように3つに分かれる葉をしていて、同じように黄色い花を咲かせる。花の頃に見分けるには副萼片の大きさを確認すればよいし、実で見分けるなら赤い実の表面についているゴマ粒のような種子がシワシワなのかツルツルなのかを見ればよい…。どちらも普通にある植物で、このあたりにも両方が生えていることは確認済みだ。
 この赤いヘビイチゴの実が痒み止めになる、という情報をどこかで入手してきた連れ合いが、昨年それを試作してみたことがある。作り方はいたって簡単、摘んできた赤いヘビイチゴの実を焼酎の中に漬けただけのことである。見方を変えれば、ヘビイチゴの果実酒である。それがヘビイチゴだったのか、ヤブヘビイチゴだったのかはもう確かめようもない。
 こうしてできた液体を患部に塗るだけである。効果のほどは…、確かになにやら効くような気がした。市販の痒み止めと張り合えるような気もする。昨年、ここへやって来た昔からの知人のAさんなどは、すっかり気に入ってしまって、新薬≠リクエストしたとのことだ。
 やる気満々の連れ合いは、今年ヘビイチゴの実が赤くなり始めるや、その収穫を始めた。もちろん、ヘビイチゴだろうが、ヤブヘビイチゴだろうがそんなことは関係ない。それまで見向きもしなかった、いやヘビ≠フ名が付いたことから避ける傾向にあったヘビイチゴの赤い実だったのに、急に光が当たったようだ。
 野外にあるテーブルの上には、焼酎の入った小さなガラスの瓶が置かれ、ヘビイチゴの実を摘んできてはその中に入れている。鮮やかな赤い色をした実は1日もすれば、茶色に変わる。痒み止めとしての効果を発揮する成分が何なのかわからないが、アルコールに溶けるものが抽出されていくのだろう。
 ヘビイチゴに注目しているのは犬も同じだ。草食系女子?の愛犬・ホタルはキャベツや菜の花などの野菜はもちろん、野草木も大好きで、散歩のときには文字通り道草を食う。とはいえ、なんでも食うというわけではなく、好みはある。とくにお気に入りは、ハコベ・ヤマグワ・オオブタクサといったところで、季節によって気になる植物も変わる。
 まだ草があまりない頃にはハコベがあればそこに執着したものだが、最近はヘビイチゴの実が大のお気に入りだ。毒はないものの美味しくはないというのでヒトは食べない実だが、イヌは繊細な味がわかるのだろうか。試しに一粒食べてみたが、まるで味がなく、ゴマ粒のような種子が妙に口の中に残って、食感もそれほど良いというわけではない。まずくはないが、あえて食べようというものでもない。
 ヘビイチゴにとっては、焼酎の中に漬けこまれるよりも、イヌの胃袋の中に入った方がいいに決まっている。ヘビイチゴの実が赤くなるのは食べてもらって、種子をあちこちにばら撒いてほしいからだ。とすれば、犬に食べられるというのは本望だろう。
 梅雨入り前の道端の一見美味しそうに見える赤くなったヘビイチゴの実。イヌにしか注目されなかった(?)、美味しそうだけれど食べられない残念な存在は、今年の初夏、急に注目度をあげている。放っといてくれ…<wビイチゴがしゃべれるなら、そう言っているかもしれないけれど…。






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