2017年6月
猫にマタタビ



白くなったマタタビの葉  2017.6.18. 榛名山西麓



 林の縁に白い葉が目立つようになった。遠くから見ると、白い花が咲いているかのような風景だが、近づいてみると、花ではなく葉なのである。花はといえば、その白い葉が付いている茎にいくつもぶら下がっている。こちらも葉と同じような白色である。マタタビだ。
 マタタビはこの季節、花よりも葉の方がずいぶんと目立つようになってきている。目的は虫寄せ。昆虫たちをおびき寄せ、花粉の運搬役としての仕事をやってもらおうというのである。そのために花の花びらや香りだけではなく、もっと存在をアピールするために上方に向けても白い姿を見せているのだろう。
 そして、マタタビといえば、連想されるのはネコである。“ネコにマタタビ”はことわざとしても成立しているくらいだ。
 ネコがマタタビの匂いを嗅ぐとメロメロになる… ということをよく聞く。実際にそんな様子を見たこともある。ものすごく効いたときには、このネコは大丈夫か?と心配になるくらいの酩酊状態で歩くことすらできないような有様になることもある。
 ネコを恍惚とさせるマタタビの成分には「マタタビラクトン」という名前が与えられている。揮発性成分である数種類のマタタビラクトンがネコの上顎の奥にあるヤコブソン器官に作用すると考えられているようだ。ヤコブソン器官というのは主にフェロモンを受容するとされる哺乳類・鳥類・は虫類・両生類が持っている器官である。
 飼い猫・ミャアはそれほどマタタビに反応する方ではないが、売っているマタタビの粉末にはそれなりに反応したし、マタタビの葉の付いた枝を与えるとそれでゴロゴロと遊んでいるときもあった。そんなとき、しばらくしてから様子を見に行ってみると、干からびたようになったマタタビの枝の上で満足そうに寝息を立てていたものだ。そんなことを思い出し、犬の散歩の途中でそんな白い葉の付いた一枝を折り取って、ネコのお土産としてみた。
 ところが…。散歩から帰って、ネコにその枝を差し出しても、何の反応もなかった。キャットフードの入っているお皿の横に置いてもみたが、見向きもしない。キャットフードは大好きなのに、マタタビの匂いはもう無縁なものになってしまったのか。
 推定年齢18歳。人間でいえば後期高齢者に入るような年齢となったミャアは耳が遠く、歩き方も心許なくなってきた。美味しそうな匂いへの反応と食欲はまだまだ旺盛だが、フェロンの感受性も低くなっているのかもしれない。
 梅雨の晴れ間。雑木林の中を心地よい風が吹き抜けていく。ミャアは外のベンチの上に置かれたネコの座布団の上で心地よく夢を見ている。マタタビなど無くても、見ている夢は十分楽しげで、ゆったりとしたネコの時間が過ぎているようだった。
 マタタビの花咲く穏やかな夏の初めの山麓の一コマである。


どんな夢を見ていることやら…


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