2015年12月
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薪の間にあってネズミの古巣 下の方にはアカネズミが食べた穴のあいたクルミも見える |
夜の寒さが感じられるようになる秋になると、朝の仕事が1つ増える。居間にある薪ストーブにくべる薪を薪小屋から室内へ運び込む仕事だ。通常ならコンテナ1つ分くらいだから1回運べは用は足りるのだが、前の晩に冷え込んだりして消費量が激しいと、家と薪小屋の間を2回往復しなければならなくなる。ちょっと億劫な仕事だが、それなりの楽しみがある。 積んである薪の中からは思いもかけないものが現れることがあるのだ。 薪の中からジネズミの子供達が現れたことは以前書いたことがあるが、ネズミの巣らしいものは必ずといっていいほどどこかに隠れている。クルミの実もいくつも出てくる。2つに割れたようになっているのはニホンリスの仕業だし、両脇に丸い穴が開いたようになっているのはアカネズミが食べたものだ。人間がまだ薪を必要としていない時期にはここでリスや山のネズミたちが生活しているのだろう。 冬眠中の昆虫たちの姿もある。薪の中で仮死状態のようになっているキイロスズメバチやクロスズメバチはみんな来年の女王たちだ。カメムシも何種類も見つかる。臭いが武器のカメムシたちも、こんなときには触ってもなんともない。テントウムシも触っても、例の黄色い液体を出すこともなく、なすがままに手のひらでコロコロと転がるだけだ。トビナナフシが卵を産んだ状態で死んでいたのも薪の上だった。 昆虫をはじめとして越冬するものたちにとって、積んである薪の中は冬越しの絶好のポイントなのだろう。だが、その年に使う薪の中にもぐり込んだ運の悪い者たちは、あるとき寒空の中に身をさらすことになってしまうのだが。 12月のある日、薪の下から現れたのは陸貝の殻だった。「陸貝」といえばマイマイ、つまりカタツムリを真っ先に連想するが、それはカタツムリではなく、むしろ淡水にいるカワニナに近い形をしたものだった。殻の色もカワニナに似ている。違うのは、カワニナが巻貝のてっぺんにあたる殻頂から円錐状に少しずつ径を増すような形状をしているのに対して、これは軟体部がでてくる巻貝の下の方に開いている穴の近くにになって径を狭めるような姿になっている。 こんな姿をした陸貝は、キセルガイかキセルガイモドキの仲間だ。そして、その違いは、貝殻が左巻きならキセルガイ、右巻きならキセルガイモドキである。これは右巻きだからキセルガイモドキの仲間ということになる。生息分布からして、これはキセルガイモドキの仲間の中のキセルガイモドキ Mirus reinianus だろう。 貝殻だけで軟体部はないから、越冬しているわけではない。薪小屋の中は雨に濡れない場所のはずだから、乾燥を嫌うだろう陸貝にとってはあまりうれしくない場所のように思えるのだが、この薪小屋を隠れ場所にしていたのか。それともネズミたちのエサの1つだったのか。予想外の所で見つかったこの陸貝は謎である。 薪小屋の薪は昨年と一昨年の秋から春にかけ積んだものだ。当たり前たが、積んだときには薪以外何もない。積まれてから1年、あるいは2年の間にいろいろなものたちがこの中にもぐり込み、薪小屋は次第におもちゃ箱のように、あるいは宝石箱のように、興味深いものたちの巣窟へと変わってきたのだ。 この薪の下には何がいるのだろうか…。 何が出てもいいようにカメラを持って、今日も少しワクワクしながら宝探し気分で薪小屋へ朝の仕事に出かけて行く。 |
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