2013年6月
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群馬県中之条町に住むWさん夫妻がやって来た。Wさんは山菜やキノコ採りが大好きで、暇があれば林の中に入って行って、何か食べられそうなものを採ってくるのだとか。 そのWさんが、「ウコギご飯」を食べた、ということを話してくれた。その話を聞いていた連れ合いも最近テレビでウコギを食べるのを見た、と言う。 ウコギとは…?ということで、その食べたものの正体について推測がはじまった。 ウコギ科の中には、タラノキ、ハリギリ、コシアブラ…と山菜として美味しいものたちがたくさんある。山菜の名前は地域によっていろいろなものがあるから、「ウコギ」は何かの別名だろうかと思ったのだが、そうではないらしい。どうやら、正真正銘のウコギを食べるようだ。 Wさんは「ちょっと林を見てくる」と言って、外へ出かけていった。 そして、しばらくして帰ってきたWさんが持っていたのは、まさにウコギの若葉だった。これを食った、という現物である。家の周辺でもよく見る植物だ。 このくらいの若葉ならまだ食えそうだ、と言う。いやな匂いはなく、山菜として食べられそうな雰囲気を十分に持っている。もちろん、食べるほど採ってきたわけではないから、これから料理しようということにはならなかったが、それで正体ははっきりした。 だが、「ウコギ」と言っても、日本中には「○○ウコギ」というものが数種類ある。オカウコギ、ヤマウコギ、ヒメウコギ、ウラジロウコギ…。このWさんの持ってきたウコギは何という種類だろうか。 掌状に5つに分かれた葉の様子、そして、葉柄の付け根にあるトゲ…。互生して生える葉の葉柄には必ずトゲがついている。そしてトゲがつくのは葉柄のところだけだ。これはヤマウコギ…!
数日後、食べてみることにした。食えると言われて、ずっと気になっていたのだ。若葉を食うのだから、今食わなければ、来年まで機会を失うことになる。もう時期的には遅そうなくらいなのだ。 雨上がりの雑木林に食材を求めて踏み込む。しかし、予想以上にヤマウコギの成長は進んでいた。実生らしい株の先端がわずかに食べられそうに見えたが、ほとんどの葉はもうすっかり堅くなってしまって、とても人間が美味しく食べるというわけにはいかないようになっていた。それでも、何とか柔らかそうな若葉を試食するくらいをかき集めた。 香りは数日前に確認したとおり、それなりの良い匂い。期待は膨らむ。 シンプルにただ数分間茹でてみた。お湯が少し緑色に変わるころ、火を止める。 とりあえず、その茹でたままのウコギをつまんで口の中へ…。…苦い!同じように少しだけ口に入れた連れ合いも渋い顔をしている。 「苦さ」は山菜にはありがちなものだけれど、この苦さは少々度を過ぎている。醤油をかけて食べてみても、苦さはだましきれない。 すでに食べ頃を過ぎてしまった葉なのか、それとも茹で方が足りなかったのか…? 「テンプラなら美味しいかも」 一口食べただけで、やめてしまった連れ合いが思いついたように言った。 新しい食材の食べ方の研究はまだ始まったばかりである。 |
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