2012年4月

6年目のニホンミツバチ


 ようやく春らしい陽だまりができるようになった雑木林の縁。春の陽射しを受けて、益子からやってきたヤナギもようやく暖かそうな毛をまとった赤い蕾を脱ぎ捨てはじめた。そこへそれを待っていたかのようにわっと集まってきたのはミツバチたちだった。蜂蜜を採るために飼育されているミツバチではなく、それよりも少し黒っぽいニホンミツバチである。
 一般に、飼育されているミツバチはヨウシュミツバチ(セイヨウミツバチ・Apis mellifera )という種類で、名前が示すとおりヨーロッパやアフリカが原産。日本にとっては外来種ということになる。一方、ニホンミツバチ(Apis cerana japonica )はトウヨウミツバチの亜種で、在来種である。もともと日本にいたニホンミツバチは、養蜂のために持ち込まれたヨウシュミツバチに押されて、ややその影は薄いようにも感じられる。
 ところが、実はこのニホンミツバチが里山では静かなブームなのである。あるいはブームというよりもニホンミツバチの飼育はすっかり定着しているのかもしれない。気をつけてみると、榛名山麓でもいたるところでニホンミツバチの巣箱を見かける。逆にヨウシュミツバチを使った大きな巣箱を見かけることの方が珍しいくらいである。
 それでは… と思って、巣箱を作って雑木林の縁に置いてみたのが2007年4月のことだった。そのときもニホンミツバチの姿をたくさん見かけたので、これならばすぐに入ってくれるさ…、なんて思っていたのだけれど、そんなに現実は甘くはなかった。試行錯誤が始まったのはそれからである。
 巣箱の中に砂糖水を置いてみたり、蜂蜜を塗ってみたりしたこともあった。だが、集まったのはハチではなく無数のアリだった。巣箱の置く場所を変えてもまるで反応なし。巣材がよくないのかも、と思って、さらに巣箱を2つ作り置いてみたけれど、それもダメ。こうして5年が過ぎ去った。
 

気温が上がるとたくさんのニホンミツバチが群れている

真ん中が空洞になっているケヤキの切り株

 今年は6年目の挑戦。
 冬の間に中が空洞となっていたケヤキの丸太を2つ手に入れた。ニホンミツバチの巣箱にするには少し小さいが、巣材としては上々の物件である。これに手を加えて、空洞を少し広げてみた。今年のニューモデルはケヤキの丸太風巣箱である。そして、さらに今年は蜜蝋を塗ってみることにした。
 ニホンミツバチを巣箱に入れるのには蜜蝋を使うとか、キンリョウヘンというランの一種を利用するということが知られているが、これまではあえて使ったことがなかった。これだけたくさんのミツバチが飛び交っているのだからいつか巣箱を見つけてくれるさ、などと悠長なことを考えていたのである。
 だが、この5年という時間が教えてくれた。いくら待ってもニホンミツバチはこれらの巣箱に興味を示さない!とすれば、セオリーどおり蜜蝋を使うしかないだろう。
 今年は少し違う… だろうか。分蜂の季節を前にして、ミツバチの動きが気になる春の陽だまりである。 




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