2010年7月

シジュウカラの豪邸


 どこからか囁くような鳥の声が聞こえてきた。
 耳を澄ますと、それは聞き覚えのあるヒナが親を呼ぶ声であることがわかった。その声はスズメでも、シジュウカラでも、キセキレイでも似ているものである。家の軒先にできたスズメやキセキレイの巣から聞こえる声、雑木林に掛けられた巣箱から聞こえてくるシジュウカラのヒナの声、どれも同じように、大きな声ではないのだが、ざわざわとしたヒナたちの合唱の声だ。こんな声を聞くと、そこにヒナたちが無事に育っているということがわかるのである。
 そんな鳥たちのベビーラッシュは春先から初夏だと思っていた。もうキセキレイも巣立ったし、シジュウカラの巣箱も空になっている。
 いったいどこから聞こえてくるのだろう?
 あたりを見回すと、フクロウのために掛けた巣箱の入口に白黒の模様が目にとまった。
 もしや、あれはシジュウカラ…?
 双眼鏡で見ると、何かを咥えた紛れもないシジュウカラだった。まさか、ヒナの声はここから来たのだろうか…、と思う間もなく、そのシジュウカラは大きな口の巣箱の中に姿を消した。そのとたん、例のヒナの声が一段と大きくなった。
 間違いない。ヒナの大合唱はフクロウの巣箱の中からだ。
 それにしても、フクロウの巣箱とは大豪邸である。フクロウの体に合わせた巣箱の広さは一辺が30cm弱ほどもある。高さは45cm、巣箱に開けられた入口の直径は15cmである。この大きな穴の縁に小さなシジュウカラの親がチョコンとのっていたのだった。
 シジュウカラの巣はなんでもいいのだろうか?こだわりというものはないのだろうか?
 巣箱を作るときには、穴の大きさは○○cmで、底面積は●●×●●cmで、穴を開ける位置は下から××cmくらいがいい… なんて説明があったりもするけれど、実際にはシジュウカラは雨が防げて、周りから隠れればなんでもいいのかもしれない。人間だって、マンションに住んでいる人もいれば、一戸建てに住んでいる人もいることだし。案外、シジュウカラは適応力があるのだ。
 それにしても、あんな大きなフクロウの巣箱の豪邸に何羽のヒナがいるのだろうか。
 フクロウの営巣は今年もまだ見られなかったけれど、巨大な巣箱もちょっとだけ役に立ってくれたようだ。
 来年こそ本命がやってきてくれますように!




 見ていると、2羽のシジュウカラが代わる代わる餌をくわえてどこからかやってきた。



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