|
ベランダとパーゴラに餌台をつけて2年目。
昨年のこの餌台のお客さんはスズメ、シジュウカラ、ヤマガラ、ホオジロといった面々だった。餌台に置かれた餌は主にヒマワリの種で、そのほかにハムスターやリスの餌として市販されている何かの種をブレンドしたものも置いていた。
その餌台での順位は、最強のスズメを筆頭に、ずうずうしいホオジロ、なれなれしいヤマガラ、最弱のシジュウカラという順位づけができていた。
そして1年後。(餌台に鳥の餌が置かれるのは冬の餌の少ない季節である)
鳥たちの食卓にも少しずつ変化が起こっていた。
今シーズン、最初の餌を置くと、すぐにシジュウカラがやってきた。彼らは覚えていたのだ。昨年は餌を置いてもしばらくは何もやってこなかったのに、今シーズンは待ってました!とばかりにすぐにやってきた。
続いてヤマガラも。前年、ヤマガラがこの餌台に気づいたのはかなり遅い時期だったが、親鳥に連れられて巣立った雛がここへやってきて、親鳥に餌の食べ方を教えてもらっている微笑ましい様子を見せてくれていた。昨年は鳥たちが2羽以上で餌台にのっている姿をあまり見ることはなかったのだけれど、このときばかりは別で、親と雛が餌台で向かい合ってヒマワリの種を割っていたものだ。おそらく、この雛たちがいっせいに今年、餌台めがけてやってきているようで、餌台にはヤマガラの姿がいつでもある。
そして、スズメは相変わらずだが、どうしたことかホオジロはやってこない。庭や周囲の藪にはホオジロだけでなくミヤマホオジロもいるのに、今年、餌台に載っている姿を見たことがない。昨年、餌台で何かひどい目にあったことがあるのだろうか。もっとも、昨年もホオジロが餌台にやってきたのは春もずいぶん深まったころだったから、今年もこれからなのかもしれない。
今シーズンの食卓の新顔はシメ。怖い顔つきで、体も大きく迫力十分。あっけなくそれまで最強だったスズメの座を奪ったのだ。このシメは最初のうちは裏の雑木林でドングリなどを拾っていたようなのだが、いつしか表にまわり、ドカッ!と餌台の中に入り込んでゆっくり食べていくようになった。大きなクチバシでバリッ!バリッ!とヒマワリの種を割り、ペッ!ペッ!とばかりにその殻をまわりに撒き散らしていく。食事のマナーはとても上品とはいえない。
ところが、そのシメも孤高ではない。ツグミの存在である。ツグミは冬鳥としてシベリアの方からやってくる旅鳥である。
今年、庭に現れたツグミは最初は他の鳥と同様にすぐには餌台へはやってこなかった。現れた当初は林の中で落葉をひっくり返して餌を探したりしていたのだが、ちょっと慣れてくると、餌台の下に落ちているおこぼれをついばむようになった。そして、いつしか気がつけば餌台の中にいたのだった。そのツグミ自身はそんな鳥世界の食卓の順位に無頓着なようで、ドップリと餌台の中にまるで座り込むようにして入り込み、マイペースでゆっくりと食事をしていく。シメよりもちょっと大きいツグミは、その大きさだけでシメに対抗できる力を持っていて、他の鳥を気にすることなく、好きなようにふるまっているのである。動きはシメに比べゆったりとしているように見え、周りで待っているシジュウカラやヤマガラなどお構いなしに、心ゆくまでゆっくりくつろいでいるようにもみえる。見ようによっては“空気の読めない奴”である。このツグミに対して、「とりぱん」(モーニング・講談社)の作者であるとりのなん子さんは「つぐみん」の愛称を与えている。
「癒し系だね。」窓越しとはいえ2mと離れていない餌台でどっしりと構えているツグミを見ながら連れ合いが言った。そして、さらに付け加えた。
「こいつは“つぐみん”というより“つぐどん”という感じね。」
“ツグミン”あらため“ツグどん”
2009.1.22. 餌台の下でぼんやりと。 |
|
雪の積もった餌台にやってきたシジュウカラ(左)とヤマガラ(上)
2009.1.10.
|
スズメ よく見ると目つきは鋭い
2009.1.10.
|
新参者のシメ
2009.2.22.
|
|