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 サクラの開花が早すぎてしまって、花見などのイベントが予定に合わなくなって困りそうだとニュースが伝えている。けれど、まだそれくらいならいい。いつの日か、消えてなくなる生物たちが出てくるかもしれない。来年も、再来年も、同じ生物たちがめぐってくるとは限らないのである。
 早春の象徴のフキノトウはいつまでも早春の花であって欲しいと願うばかりである。
 雪のない記録的な暖冬となった今年の冬。厳冬期とされる2月でも春を思わせる陽気の日が続き、春がやってきたのかと錯覚してしまうようなこともしばしばである。人間でさえそう思っているのだからカレンダーを持たない動植物たちにとって、春はもうはるか前からやって来ていたのかもしれない。

 雑木林のへりでフキノトウを見つけたのは3月7日のことだった。昨年、同じ場所でフキノトウを見たのは3月も下旬になってのことだから、半月は早いことになる。ここ榛名山麓も例外ではなく、暖冬の影響は出ているのである。
 フキノトウの黄緑色は独特の瑞々しさである。早春の芽吹きの淡い色の中でも群を抜いている。離れたところからでも、あの色を見れば、そこにフキノトウがあるということがわかる。まさに早春の色といえよう。
 それにしても、こんなにも早く春が来てしまっていいのだろうか。冬から春への季節の移ろいは早め、早めとシフトしまうのだろうか。
 フキノトウの後にはおそらくスミレが林床に姿を見せてくれることだろう。そしてそのあとを追うようにヒトリシズカやユキザサが続くはずだ。季節が巡ってくれば、去年と同じもの達が、同じように、同じ場所に姿を見せてくれる。そんなふうに疑いもせずに思っていた。何年も、何年も、繰り返されてきた四季に合わせた自然界の変わらぬサイクルを信じ切っていたのだ。
 けれど、同じものが同じように見られるとは限らない。今年異常に早く姿を見せたフキノトウは、ふと、そんな約束されたように繰り返される季節の移ろいに不安を投げかける存在となった。
 氷河期に日本で生きていた動植物たちは、気候が温暖になるにしたがって、寒冷な地を求めて移動していった。あるものは北へ。あるものは標高の高いところへと。高山植物と呼ばれるものたちの多くは、そうやって下から上へと追い上げられてきたのである。北へ逃げたものはさらに北へ逃げればいい。けれど上に追いつめられたものはもう逃げる場所がない。


   
      雑木林の林床に顔を出した今年最初のフキノトウ
   







2007.3.

早春のフキノトウ