TOPへ戻る


戻る

最初に見かけたオス。すっかり紅葉に同化してしまったように見える。 
    2006.11.1. 東吾妻町萩生
 数日後、今度は家の庭のサンシュユの木に現れた。だが、アッと思ったときにはすでにどこかへ飛び移り、目撃できたのはわずか数秒。しばらく待っていたけれど、もう現れることはなかった。視線が一瞬あって、慌てて飛び去っていったような感じだ。

 さらに数日後。庭に出ると、微かだけれど、どこからか「カッカッカッ…」というジョウビタキ特有の鳴き声が聞こえてきた。慣れてくると、この音でジョウビタキが近くにいるというのがわかるようになるものである。もちろん、ジョウビタキの鳴き声はこんな声だけではないのだけれど、この、どうやって声を出しているのだろうという思いたくなるような特徴ある声(音?)は、いつまでも記憶として耳に残っているものだ。
 庭に立ったまま、耳の感度を上げ、目を望遠レンズのようにして、あたりを探す。彼らのお気に入りは、明るい開けた目立つ場所。
 「カッカッカッカッ…」再び、あの特徴ある声が聞こえてきた。
 いた。ヤマグワの枝にとまって、あっちを見たりこっちを見たりと忙しそうにしている。あるいは、しきりにあちこちにお辞儀するように頭を下げたり、腰を振ったりもしている。だが、あのオスではない。腹側のオレンジ色が全然目立たない。ちょっとオレンジ色がかってはいるが、とても鮮やかとは言い難い。羽根も黒くは見えない。ただ、ヒタキの特徴の白い斑点はしっかりとついている。ジョウビタキには違いない。
 どうやら、これはメス。とすれば、同じ場所にオスとメスのジョウビタキがいることになる。まだテリトリーが決まってはいないのだろうか。この個体はどれくらいまで接近を許してくれるのか?しばらく、遠くから眺めたあと、ゆっくり、ゆっくりと接近を試みてみた。
 だが、やはりこの個体もすぐに飛び立って、少し離れたところへ移ってしまった。
 なかなか接近を許してはくれない。関東平野のジョウビタキはもっともっと寛大に、近付かせてくれるのに…。街へおりたジョウビタキは、そこに人工的なものがたくさんあるために、擦れてしまってしまって、人を怖がらなくなってしまっているのだろうか。

 警戒心の強い、ナイーブな榛名山のジョウビタキは、ここで冬を迎えてくれるのだろうか。どういう気まぐれで、榛名山麓へ降り立ったのか聞いてみたいけれど、彼らは何も語ってはくれない。鳥がよく知っていて、今年は暖冬なのかもね、と連れは言う。
 2年ぶりにジョウビタキと共にある穏やかな初冬の朝である。

           
            家のまわりをテリトリーにしたかもしれないメス。 無事に冬越ししてくれればいいけれど。          
                                                   2006.11.16. 東吾妻町萩生








 11月の日だまり。
 明るい雑木林の縁にオレンジ色の小鳥が飛んできたのが目に入った。鳥は青空をバックにして、葉のほとんど残っていない木立の先端に止まった。遠くからではあるけれど、胸の鮮やかなオレンジ色と黒い翼の中にある白斑、頭のてっぺんの灰色がわかる。間違いようもない、ここ数年、見ることのなかったジョウビタキのオスだ。榛名山麓へ引っ越してきてはじめて見るジョウビタキである。
 榛名山麓で過ごした2回の冬の間、家のまわりでジョウビタキを見ることはなかった。益子町でも、さらにその前にいた熊谷市でも、秋から冬の間は身近なところにジョウビタキの姿があったのに、ここ榛名山麓ではその姿を見ることができずにいて、残念な思いをしていたのである。
 ジョウビタキといえば、冬鳥。秋になると大陸から渡ってくる鳥としてよく知られている。その冬鳥がやってこないということは、榛名山麓は寒すぎるのだろう、なんて連れと話をしていた矢先のことだ。
 もっとよく見ようと、とまったジョウビタキに近づいていくと、すぐにパッと飛び立ってしまった。思ったよりも警戒心が強いようだ。
 概して、ジョウビタキの警戒半径は小さい。シジュウカラやコガラと同じくらい。かなり接近してもなかなか逃げるようなことはない。かえって、縄張り意識がとても強いので、見慣れないものが近づいていくと、向こうから近づいてきて、鳴きながらまわりを飛び回ることもあるくらいだ。ところが、この個体はやけに敏感に察して、自らサッと飛んでいってしまったのである。

 

2006.11.

ジョウビタキのきた冬