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センサーをワインダーにつなぎ、ストロボを取り付けた様子。 

往年の名機! オリンパスOM−1
  980円で買ってきたセンサーライト
室温約20℃の環境でテストすると、見事にストロボが光って、シャッターが落ちた。
まずは成功!
 しかし、センサーライトの説明書によれば、センサーが感知したら30秒間ライトが光り続けるというから、次のシャッターが切れるまでには30秒間のタイムラグができる…はずだった。ところが、どんな加減なのか、センサーの前で動き回っても、1分以上シッャターが切れなかったり、10秒くらいの間隔で切れたりと、よくわからない動きをする。まあ、980円のセンサーだから仕方ないか…。
 一応、自動撮影のシステムはできた。でも、これを野外にこのまま設置するわけにはいかない。いずれ雪・雨で壊れるかもしれないけれど、せめて気持ちだけでも水から守るようにしておきたい。また、野生動物もカメラがあったら、驚いて近づいてこないかもしれない。そこで、防水にはちょっと心もとないのだけれど、カムフラージュをかねて、木でカメラとセンサーを入れる“ハウジング”を作ることにした。
 余っていたコンパネやら、板きれなどを組み合わせて、カメラとセンサーが入る箱を作って、前面にレンズとストロボとセンサーの窓を開ける。できればこの窓には、少なくともレンズの前には、ガラスでも入れたいところだが、手頃なガラスが無かったので、素通しのままだ。その代わりにレンズとセンサーがけられない程度に両脇の壁を前面にのばして、横からの雨をガードすることにした。そして、上からの雨に備えて、屋根も庇を長くのばして雨対策とする。これで、少しは耐えてくれるだろう。

 あとは野外の勝負だ。
 さっそく、ホームセンターの探索に出かけてみた。
 センサー付きの街灯が何種類もある。値段もそう高いというわけでもなかった。ダメでもともとと気持ちで、そんな中から980円の乾電池式のセンサーライトを選んでみた。この値段なら分解して失敗してしまっても、諦めもつくというものだろう。もちろん、説明書を見ただけでもいくつも問題点はあった。「屋外では使用不可」、「使用温度は0℃〜40℃」などとあるから、氷点下の屋外で使うなどというのは保証の範囲を大きくはみ出していることになる。冬の雑木林の中はプラスの温度にならない日がかなりありそうである。それが原因でダメなら、そのときはまた別の方法を考えることにしよう。
 さっそく、買ってきたセンサーライトを分解してみる。見れば、構造はいたって簡単な様子。単三電池4本から直流6Vで電流がセンサーへ流れ、センサーが感知すれば、そこから1.8Wのクリプトン球へ電流が流れるという仕組みのようだ。このクリプトン球への線をカメラのシャッターへとつなぎ変えれば良いような気がする。
 カメラは…、デジカメなら結果がすぐわかるし、フィルムを浪費することもないので良いのだが、電池の消耗が難点だ。しばらく何もしないで置いておくと、眠りについてしまうし、スタンバイの状態を保っておくと、あっという間に電池を消耗してしまう。スタンバイの状態で氷点下の環境に置いておけば、一晩だって持たないに違いない。そこで、今はもう現役を引退して、物置きで永遠の眠りに就こうとしていたオリンパスOM−1という骨董品的カメラにその大役をまかせることにした。1973年に発売されたというからもう30年以上前のカメラで、ピントも露出もシャッタースピードもカメラにお任せとなる以前の一眼レフである。ピントも露出も自動でできない代わりに電池はほとんどいらない。カメラ内蔵の露出計を作動させなければ、電池などなくてもシャッターが切れるというある意味、優れものなのだ。だいたい、このカメラは天体写真を撮るのに使っていたので、電池などめったに入れたことがなく、冬の寒空の下で酷使され、霜を被ったりしても壊れることもなく動き続けた実績がある。
だが、OM−1には、自動的にフィルムを巻き上げてくれる機能もない。1回シャッターが落ちたらもう終わりというのでは効率が悪すぎる。そこで、これも永遠の眠りに就こうとしていたワインダーと呼ばれるフィルムを巻き上げる付属品を取り付けた。
 このワインダーについている端子にセンサーから電流が流れればシャッターが切れ、次のフィルムを巻き上げるというわけだ。
しかし、それでもまだ足りない。OM−1にはストロボも内蔵されていないのだ。夜行性の動物を撮るのにストロボは不可欠だ。そこで、とりあえず昔上野のアメ横で2000円で買ったガイドナンバー18の貧弱なストロボをフォトシューに取り付けた。これもいつ壊れてもちっとも惜しくないガラクタ同様のものだ。
 材料が揃ったところで、センサーからの信号をワインダーへ送るようにちょっとした工作をする。工作といっても、センサーから出ている2本の線をワインダーにつなぐだけのことだ。ワインダーのジャックの形状はミニプラグだったので、モノラルのイヤホンの線を切って、このジャックを流用することにした。
 
 
 雪の積もった雑木林に足を踏み入れると、いたるところに動物の足跡を見ることができる。
 降ったすぐ後の新鮮な雪面にはほとんど足跡など付いてはいないのだけれど、日にちが過ぎるほどに足跡はどんどんと増えていく。ダントツで目立つのはウサギの足跡だ。林の中といわず、庭の中や窯場の脇など我々の生活圏内まで平気で足跡を残している。 ネズミの足跡もある。小さな足跡の真ん中にシッポを引きずっていったのだろうという跡が付いていたりしている。そんな足跡を追跡してみると、雪面を長い距離歩いているわけではなく、あるところから突然足跡が始まって、あるところで突然終わっていたりしている。よく見ると、そんなところには雪の下にネズミの穴が開いていたりしているのだ。
 ネコの足跡よりも小さい足跡もある。爪の跡がはっきりしている。これはテンかもしれない。
 …なんて森の中を歩いているうちに、足跡だけではなくて、その姿を捉えてみたくなってきた。
 足跡の主たちの行動は夜の世界のこと。いつ来るかわからない彼らを氷点下の森の暗闇で待っているなんてことはしたくないし、現実的でもない。ここは、無人カメラを仕掛けてその姿を写真にするというのがベストだろう。センサーで動物の動きを察知して、カメラのシャッターを自動的に切るという手段だ。
しかし、これは普通にカメラで写真を撮るというのとはわけが違う。いろいろと用意が必要である。幸いにして、生活のあちこちではセンサーが使われているから、それをうまく利用して自動撮影ができるかもしれない。

2006.1.

タヌキ撮影計画