紅葉というよりもすでに冬枯れの山麓     2005.12.2.

  
 
そんな紅葉の頃、伊香保から吾妻町へ榛名山の山頂を自動車で走り抜けた。伊香保温泉の上あたりからは目の覚めるような赤や黄色の紅葉。標高700mの我家の周囲の紅葉とは比べものにならない鮮やかさだ。同じ榛名山でも、標高が違うとこうも違うものかと驚く。
 気温の差が大きいと紅葉が鮮やかになるというが、それだけではなく、そこに生えている植生も紅葉の様子を左右することだろう。そして、太陽の光も忘れてはならない。晴れているときと、曇っているときでは、まるで違って見える。なんといっても最高に美しく見えるのは、青空のもとで逆光で見る紅葉だ。
 このときの伊香保から吾妻町へ抜けていく榛名山の山頂の紅葉は、ちょうどこの条件をクリアしていたのだろう。それは美しい光と影と色彩だった。
 しかし、である。けっして鮮やかな紅葉とはいえない標高700mの家の周りの林の色づきを見ていると、観光客が集まっている榛名山山頂のあざやかな紅葉よりも、見ていて飽きないものがあるのである。
 それはきっと、私たちが一年を通してこの雑木林の中で暮らしているからだ。長い冬の後の木々の芽吹きに心潤うような喜びを感じ、美しいと思い、あの新緑のフィトンチットに癒され安らぎ、そして今、紅葉落葉する姿に私達の時間の流れまでも感じているからだ。

  雨上がりの青空のもと季節風が強く吹きすさぶ。
 すっかり紅葉しきって、やっとのことで枝にしがみついていた、いつ落ちてもおかしくないような葉たちがこの風に吹き飛ばされて、雪のように舞う。あるいは、風のない星のさざめく凍りついた夜、カサコソと落葉する音が聴こえ続ける。ひっきりなしに落ちてくる枯葉は、落ち終わることはないかに思える。これだけの葉が空に舞ってしまえば、もう落ちてくるものなどないように思えるのだけれど、見上げれば、木々の枝には同じように葉がくっついているから不思議だ。いったいどれだけの葉があることやら。
 それでも、いつしか枝には何も残らず、その梢を木枯らしが通り抜けるようになる。
 本当の冬がやってくるのだ。
 








       






戻る

TOPへ戻る

2005.11.

 11月にもなると空は抜けるような青一色となる日が多くなる。シベリア高気圧が小笠原高気圧を圧倒して、気圧配置が冬型となったための晴天である。小笠原高気圧が強いときの晴天では、晴れていても空全体に水蒸気が多くて、抜けるような青空にはならない。
 シベリア高気圧が青空をもたらすようになると、気温は急に低くなって、いよいよ冬がやってくるのである。
 標高700mの家の周りの木々は、この空気の変化に対して、敏感に反応してきた。
 秋の始まりから、ゆっくりと葉の色を緑色から黄色へと変えてきた木々たちは、葉を落としながらも、枝についている葉はさらに深い黄色や赤へと色を変えようとしている。秋の初めからいち早く変化を始めたのは、サクラの仲間だった。ヤマザクラやウワミズザクラやチョウジザクラなどが、まだ周囲の木々が緑色の葉をつけている中で、微妙に黄色の色を増やしてきた。
 続いて、カエデの仲間。ツリバナの仲間…。
 気がつけば、いつしかコナラも、クリも、ヤマグワも、みんな葉はもう緑色ではなくなっていた。
 けっして鮮やかな紅葉というわけではない。山全体がだんだんと黄色みを帯びてきたという感じの色変わりである。

700mの